悪役令嬢

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『怖がり』
※前回の『星が溢れる』と話が繋がってます。

「あの、それなら俺いい場所知ってます」
星が取れる絶好の場所を知る執事に
ついていく悪役令嬢。

夜道を歩いていると、セバスチャンが足を止めた。
「主は先に帰られてください。ここから先は、
俺一人で行きます」
「まぁ、どうしてですの?」

悪役令嬢が抗議の意を唱える彼は目を伏せた。
「その、そこへ行くまでに魔物が出没するからです」
「魔物?」
「はい。その場所は昔、大きな戦いがあり多くの者が
犠牲になったと聞きました。その者達の怨念が
今でもこの地を彷徨っているとか」
「……………」
「主?」
「……なぁんだ、そんな事でしたの。
心配ご無用、私これでも鍛えてますから。
そんな魔物など蹴散らしてあげますわ」

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カラカラと音を立てながらこちらに近付く骸骨の群れ
宙には人の顔をした幽体がぷかぷかと浮いている。
錆びた剣を持ちながら襲いかかってくるスケルトンの攻撃をセバスチャンは躱して、その身を蹴り上げた。
すると骸骨の体は崩れ落ち、骨が地面に散らばった。

カタカタと小刻みに震えながら冷や汗をかく
悪役令嬢を、セバスチャンは心配そうに見つめた。

「主、大丈夫ですか?」
「はい?今、私が口先だけのへっぽこチキン野郎
だと、そうおっしゃいました?」
「そこまで言ってません」
「大丈夫です。ええ、大丈夫ですとも!当然です。
私を誰だとお思いで?泣く子も黙る悪役令嬢
ですわよ。そんな悪名高き私が骸骨や幽霊
なんぞにビビり散らかすとでも?!」

すると何処からか子どもの笑い声が聞こえてきた。
悲鳴をあげる悪役令嬢と
険しい表情を見せるセバスチャン。
実体のない亡霊には物理攻撃が通用しない。

悪役令嬢はふとある事を思い出し鞄から取り出した。
それは魔術師から貰った「魔法のカメラ」だった。
亡者たちは光に弱いと聞く。

悪役令嬢がシャッターを切ると眩いフラッシュが
放たれ、その光を浴びた亡霊たちは、
呻き声をあげながら霧のように消えていった。

「やった!やりましたわよ!セバスチャン!」
悪役令嬢が興奮気味に語りかけると、
彼女の執事は微笑みを浮かべた。
「見事な腕前です。主」

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何だかんだあって魔物を倒し、星を手に入れた二人は
無事屋敷へと帰り着くことが出来た。
セバスチャンの淹れた紅茶を飲みながら
悪役令嬢はため息を零す。
「もうお化けはごめんですわ。くわばらくわばら」
「お疲れ様でした。主」

3/16/2024, 11:57:14 AM