キラキラとオレンジ色に光る波打ち際をフルオーダーの革靴を濡らさないように気をつけながら歩く。
気まぐれな君とのドライブは、いつもこちらをハラハラドキドキさせてくれる。
今日だって、夜にパーティーがあると言っていた筈なのに、街から大分遠いビーチに連れてこられたようだ。
全身に染みついたであろう潮の臭いを取る為にシャワーを浴びて、髪をセットして服も着替えなければいけないから、一度家に戻らないと……。
間に合うかな、と腕時計に気を取られて足元への注意が疎かになった一瞬。
あっという間もなく膝下まで一気に波が来て、革靴が海水に浸かった。やってしまった。
溜め息一つ、後ろを振り向けば、両の人差し指に自分の靴を引っ掛けた君がニヤニヤと大股で歩いてくる。
……何だかムカついたので、寄り添ってきた君の耳朶をガリっと齧ってやった。ざまあみろ。
テーマ「海へ」
8/23/2023, 4:59:17 PM