燈火

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【鳥かご】Other Story:B


無くしたくない大切な物をどう管理するか。
僕はいつでも見える位置に置いておく。
ちらと目を向けるだけで、そこにあるとわかるように。
では、形のないモノはどう管理するべきだろう。

見えないモノは存在しないも同然。
だから何度でも、しつこいほどに確かめないと。
仕舞っているだけなら定期的に表に出せばいい。
そもそも目に見えないモノは、信じることにした。

言葉で。行動で。君は懸命に伝えようとしてくれる。
僕が疑うと、何度でもここにあると教えてくれる。
だから僕も信じることにした。君だけは。
それが目に見えない最たるモノ、心だとしても。

結婚するとき、僕は条件を出し、君は一つの約束をした。
条件は二つ。まず、君が専業主婦になること。
そして外出するなら連絡するか、書き置きを残すこと。
君は頷いた。僕を不安にさせる言動はしない、と。

君のいる生活は、想像よりもずっと安らぎで満ちていた。
「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」「お疲れさま」
その言葉があるだけで明日も頑張ろうと思える。
君が言葉を惜しまない分、僕も行動で尽くしたい。

「週末、友達と遊びに行ってもいい?」君のお願い。
もちろん、と僕は笑顔で返す。脳内では葛藤。
外で何かあったら。もしも帰ってこなかったら。
不安を隠して送り出した。

君のため。そう考えた末の選択を、後悔している。
〈今どこ?〉〈何してるの?〉〈いつ帰ってくる?〉
何時間経っても未読のままで、返事がない。
やっぱり、外に出したらいけなかったんだ。

7/26/2024, 7:56:03 AM