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【コーヒーが冷めないうちに】

こぽこぽと、音を響かすサイフォンに耳を傾け、
コーヒーの香ばしい香りに包まれてあなたを待つ。

薄暗くなってきた夕方の店内、静かなクラシック、時計の針だけが時を刻み、扉が開くその瞬間まではまるで刻が止まったようにも思えてしまう。

一昨日、あなたは来なかった。
昨日も、あなたは来なかった。
今日、あなたは来るのかしら?

小さな期待と、わずかな失望。…そして一縷の望み。
その全てを両手に抱えて、私はあなたを待ち続ける。

扉が開く。鐘がなる。カウンター横の猫が飛び降り、爽やかな風が入り込み、顔を上げた私の瞳に映ったのは………いったい誰だったのだろうか?

9/26/2025, 2:30:13 PM