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―――願い事が1つだけ絶対に叶うとしたら、何願う?……あっ、叶えられる願い事増やす系はナシね!?

 相棒とも呼べちゃうような仲の親友に昔聞かれた言葉だった。1つだけ、なんて言われるとやっぱり悩むもので、結局俺は決めれなかったし、逆にって聞いたら親友も決めれなかった。まあ一人だけ、答えを出せてたけど。

「……あのときは幸せだったなあ」

 津波の防災用に高く高く建てられたビルの屋上に立つ。最近の地震、そしてそれによる津波で、この国は多くの人を失った。今俺の知人で生きているのは、一人だけ。

「あらまたネガティブを含む発言だこと。あなたってば、絶望することしかできないのかしら?そんなんだからどうにも変えられないのよ」
「おいおい人貶しがなんだって?絶望させる側がよく言う。そんなだから誰も変える気にならねぇのさ。俺含めてね」

そう……いわば腐れ縁、宿縁の知人。そして、親友の双子の姉でもある彼女だけが生き残った。

「変えれないのを人のせいにするなんて」
「何も行動してないやつよりマシだと思うけど?」

煽ってくる知人に余裕な表情を作りながらそう返す。するとさらに気に障ったのか、知人のお美しいとされるにっこり笑顔がだんだん崩れてきた。漫画とかなら怒りマークがついてるところだ。

「へぇ~、行動してないやつより、ねぇ?じゃああなたは部下が行動している今、何もしてない様子だったけれど私にわからないだけでそれはそれは有意義なことをしてたんでしょうね?」
「―――願い事が1つだけ絶対に叶うとしたら、何願う?」
「っ!」

 弟に関することだと思ってなかったのか、目を丸くして彼女は驚いた。そして、何かを抑えるように口の前に手をおいた。

「1つだけ?」
「そ、1つだけ。……覚えてない?」

あのとき、一人だけ答えを出せていたのは彼女だ。そのときは……もうなんて言っていたか、俺の記憶にはないけども。

「そんな昔のこと、覚えてるわけないじゃない」
「そ?じゃあ、今考えるとするなら?」
「……こんな荒廃した世界前提で考えなきゃいけないの?最悪ね」

「―――1つだけ、なら」

 まるで勇気を一歩、振り絞るように震えながらの彼女の言葉は、強い風にさらわれ大事なところは何一つ聞こえなかった。

4/3/2026, 1:05:33 PM