親からの期待。それはものすごく重く、辛く、暗い。だってその期待に添えないの暴言と暴力が飛んでくる。なんで、こんな辛いの?
口の中に滲む鉄の味。熱を帯びる頬の痛み。必死に目を伏せて泣くまいと耐える。こんな私に何ができると言うんだ。
でもあるとき。
「それどうしたん?」
崩れた口調、気だるげな言い方。でもその中に興味と不安そうな意味が籠った言葉。
「別に。なんでもない」
痛い。親に殴られた。そんな言葉を隠しての自分の一言。なんて馬鹿なんだ。話したこともない男子に、必死に自分を隠してそういうなんて。
彼は、ジーッと私を見つめるだけ。そんな時、ついに呆れたのか、興味を失ったのか私に背を向け出して歩き出す。
また心が重くなる。助けて欲しかったのかもしれない。強がりな自分が心底嫌だった。
「おい。」
急に彼は振り向き、私に手招きした。
「そんなんじゃ痛いままだろ。保健室行くぞ」
「ぇ、でも」
「強がんな。早く行くぞ」
荒い口調。でも私を保健室に連れて行ってくれて、頬のことを心配してくれた。それがいつか。
「あなたにこの子の何がわかるって言うの!!子供が」
「お母さんがコイツを見てきた時間は、俺には敵わないと思います。でも、こいつが辛い時、泣きたいと思った時、助けを求めた時、俺がこいつの手を取ってやりたいんです!!それは俺にしかできないと思います……」
母親からの束縛と暴力と暴言。
暗く冷たい鳥籠の中で閉じ込められていた私は、彼という名の光に包まれていた。やっと耐えていた涙が頬を伝う。
彼は、私には敵わなかった母親を言い負かし、私の手を握って外に連れ出してくれた。そこで初めて抱きしめてくれた。
「俺が……お前を何があっても守り続ける。絶対だ。」
やっと私は……暗闇から、光に包まれたのか。
12/3/2023, 2:58:41 AM