帰燕[Kien]

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作品No.100【2024/07/09 テーマ:私の当たり前】


 私、自分の本名がすきなんですよ。
 漢字もそうなんですけど、なにより、そこに込められた意味がすきで。画数が多めなのが難点ではありますが、それくらいですきな気持ちが無くなりはしません。唯一無二、自分にしかないモノだと思っているから、大切にしたい気持ちが人一倍強いのかもしれません。
 まあ、だからなんだといいますと。
 それだけ、自分の名前を間違えられると腹が立つんです。部首が違うとか、漢字自体違うとか、果てはそもそも違う名前になっているとか——この約三十年、そういうことはよくありましてね。
 学生時代——それこそ、大学生までは、苛立ちを含ませて指摘してました。だって、失礼じゃないですか、名前間違えるのって。日本には、ひらがなやカタカナもありますし、わからないなら——というか、間違えるくらいなら——無理に漢字で書くなと、思うわけです。
 それで結果どうなったか。
 「こっわ」、「そこまで言うことないじゃん」——そのようなことを言われました。
 は? 間違えたことに謝罪はねえのか?——そう思いましたよ。他人様の名前間違えといて、なんで間違えられた方が悪役みたいになっているのか、意味がわからなかった。でもそれを言葉にするには、私はその人達とあまり仲良くなかったし、なにより臆病すぎました。
 これがきっかけなのか、それ以来、名前を間違えられることに対してある種の諦めがつきました。指摘することは、ほぼしなくなりました。
 それでも、私の根っこは変わりません。
 私は自分の名前がだいすきです。それだけは自信をもっていえます。だからこそ、そんな名前を間違えることは失礼だと思います。

7/9/2024, 2:50:36 PM