あなたはわたしの隣にいるのに、あなたの気持ちは私よりずっとずっと遠くの場所にある。
まるで遠くの空にかかっている大きな虹みたい。
綺麗な虹をくぐろうと思って、一生懸命走っても、絶対にそこへ辿り着くことはできない。
あなたを振り向かせようと努力しても、あなたの気持ちはこちらを振り返ってはくれないのと一緒だね。
遠くの空を眺めるみたいにあなたを見ているだけしかできない。
「ねえ、今日帰ったらそっちの家に行っても良いかな? お母さんとお父さんが今日いないから、夕飯なくてさ」
「おー」
「これ秘密なんだけど、お母さん料理よりおばさんの料理好きなんだよね!」
「おー」
「じゃあ私がおばさんに連絡しておくね!」
「おー」
「……ついでにおばさんにえっちな本を隠してる場所教えとくねー」
「おー…………って、はあ!? ま、待てッ! やめろッ! 言わなくて良いだろ、そんなこと!! というかなんでお前が知ってんだよ!?」
「知らないよ。前、遊びに行った時になんか焦って隠してたから適当に言っただけー。やっぱりえっちな本持ってるんだ……男の子だもんねえ」
「なんだよ、ブラフかよ……!!」
「だってわたしの話聞いてないし……どうせまたあの先輩のこと見てたんでしょ」
「……わ、悪いかよ」
「べっつに〜! 悪いとは言ってないけど、わたしの話もちゃんと聞いてよね!」
「分かった、分かった」
「すっごい棒読み〜」
空からしたら、わたしなんてちっぽけな存在。
それでもわたしは、今日も遠くの空へ想いをはせる。
――遠くの空へ
8/16/2025, 2:47:25 PM