夢見がちな眠り姫

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目が覚めるまでに


悪魔は今夜も仕事をする。

僕には彼女が見えるだけで、彼女には僕が見えない。だから、僕の仕事が成立する。僕、悪魔の仕事は、人間界から魂を借りること。いずれは、別の器にその魂を入れ人間界にまた返す。なのに、人間は悪魔が人を殺すと信じてばかりいる。これだか、表面しか見ない人間は嫌いなのだ。

彼女というのは、今回の僕の仕事のターゲットだ。まだ、若い。数え年で10も行かないほどに。書類を確認すると、7歳3ヶ月となっている。O型、好きな食べ物 カレー、将来の夢 看護師さん、好きな動物 ねこ。そして、恋をしている。
だから、なんだと言うのだ。ただ、魂を借りるだけ。後で返す。
今日、明け方の、4時27分、彼女の魂を拝借する。しかし、それだけが仕事ではない。残り短いその器での一時を楽しんで貰うこと。これも悪魔の仕事だ。僕は精一杯、彼女を手伝うつもりだ。

少女はもちろん寝ている。真夜中だから当たり前だ。彼女は泣いていた。寝ながら。悪夢を見ていた。その器で見る最後の夢が悪夢なんて、悪魔は少女に同情した。悪魔は仕事を達成させようと、とっさに彼女を起こそうとした。だが、起こさなかった。

「最後に見る景色が、僕なんて。悪夢の方が彼女のためなのだろう。」

悪魔は何もしなかった。


何もしなかった。ただ、彼女の目が覚めるまで、彼女を見つめていた。


「僕はクビだろうね。」

8/4/2023, 8:21:16 AM