maria

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遠くの空へ


コロがシッポを振りながら小走りに私のリードを引っ張ろうとする。
4月になっても夜はまだ肌寒い。
待って、待ってとたしなめながら
街灯の灯る公園まで来ると、夜桜が照らされていた。
冷たい石のベンチに腰掛け、ぼんやりと桜を眺める。

2年生まで同じクラスだったあの人が、
3年になったとき突然進路変更をした。
就職希望者のクラスに。
教室の階さえ違うそのクラスには
私はとうとう近寄ることさえできなかった。

どうして進学コースを離れたの?
どうして何も教えてくれなかったの?

3月になってお互い卒業したあとで
彼はイギリスに留学したと風のうわさで聞いた。

夜空を見上げると飛行機の灯りが点滅しながら西の空へとゆっくりと向かう。


あの点滅する灯りが流れ星であったなら
私は力の限り何度でも願う。

もう一度会えますように
もう一度会えますように
もういちど!!

コロが座り込んだ私の膝へ前足を乗せて
早く散歩しようよと、鼻を鳴らす。

誰も見ていないこんな夜だからこそ
できることもある。

私は立ち上がり両手を夜空へと伸ばした。

あぁあなたの息づくその街は、今は朝?
そのあなたの住む街へ
遥か遠くの空へ
この想いが届きますように。

4/12/2023, 3:03:26 PM