『夢の行き先』
ぼんやりと雲を眺めていた。世の中は平等に時間が流れているのだろうかと疑問が湧く。
「もう、やめよっかなぁ」
高校のときから小説を書いて、高校生になって小説家という夢が定まった。だが今年で28歳になる。会社員になってどのくらい経つのか。高校生の頃にあった熱量が今はもうなかった。
大きな雲が青い空のキャンバスの上を流れていく。ついさっき、この場所でサイトを開いて落選を知った。やりきれない気持ちになっていたが、風は気持ちがいいし天気はいいし、寝転がったら最高だった。
落ち込んでいた気持ちが全てどうでもよくなる。もういいじゃないかと、そんな気持ちにもなった。
「でも、目指したいんだよな」
つぶやいてから目を閉じた。光が瞼を透かし、目の前がやんわりと薄桃に染まる。はぁ、と大きくため息をついて起き上がった。
「もう少し、足掻いてみようか」
この天気がそんな気持ちにさせてくれた。夢はまだ遠いのか、それともすぐ側にあるのに気づかないだけなのか。
30歳の誕生日まで、と自分の中で目標を立てて縋り付いてみることにする。でも今は、しばらくこの場所で空を見てようと思うのだった。
おわり
5/5/2023, 3:35:28 AM