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「昨今の時代背景的にさ、男女以外も用意すべきだと思うんよ。」

 偶然、ひなまつり直前に帰省してきた姉がいかにもな顔でいかにもなことを言う。

「え、なに、急に。」
「折角男も女も居るんだからさ、もっとこう……」

 口の中でぶつぶつと呟きながら、期間限定パッケージのお菓子の空き箱を黙々と組み立てている。

 暇人なんだな、可哀想に。

 可哀想なので付き合ってあげることにした。

 制服のジャケットをハンガーにかけて、スエットに着替える。

「ううっ、つめたっ。」
「床暖のとこ置いとけばよかったのにぃ〜……よし、できた!」
「……は!?」

 可愛らしい桃色の空き箱の上にちょこんと佇む、


 お雛様と、侍女。

「……なにやってんの。」
「……スーッ……身分差っていいよね!!!」
「うるさっ!!」

 姉は悶えるように顔を覆って、動かなくなった。

 お内裏様は壇上にすらあがらせてもらえていない。

「ね、この空いたスペースにお内裏様置けばいいんじゃない?」
「は???こっちはこっちで百合の花咲いてんでしょ。てぇてぇに挟まる奴はお内裏だろうと許せねぇ。」
「桃じゃないんだ……」
「あーーーでもこっっっち、は、あり?かなぁ〜〜〜?いやでも男五人集は奇数なのがいいんだよ……誰か絶対報われないのがさぁ……!」

 久々に会った姉のめんどくさいスイッチを押してしまったようなので黙って部屋へと踵を返す。

 お母さんへ。

 雛人形をはやく仕舞おうが出しっぱにしようが、この人は結婚できません。

「ただいま〜。あっねぇもうお姉ちゃん帰ってきてんの〜?」
「ただいまー。」
「おかえりー。アニメイト受け取りできた?」
「うん。朝イチで取ってきた。」
「そ。よかった。」
「ねぇ、お母さん見て。」
「えっ?……まって天才?天才か?」
「えっ、だよね?」
「やばい、うちの子天才すぎる。ちょ、Xにあげるわ。」


 あんたのせいか。

3/3/2024, 6:00:44 PM