ひらり
ひらり、ひらり。
私の手のひらで舞うのは、
風に遊ぶ粉雪でしょうか。
早春を彩る花びらでしょうか。
それとも――
貴方の生命の欠片でしょうか。
貴方は、私の全て。
幾度となく心が囁きます。
貴方の優しさに救われた日から、
私の生命も、心も、
貴方を求めて、止まないのです。
貴方の魂は、
余りにも美しく、
余りにも儚くて。
この醜悪な世界に傷付けられ、
ひび割れ、砕け散り、
苦しみに沈んでゆくのです。
愛しい貴方の絶望が、
私の指先に触れるたび、
切り裂かれるような、
甘美な痛みが胸を満たすのです。
そして、静かな破滅が、
そっと爪を立てるように、
ゆっくりと染み込んで、
骨の髄まで浸食していきました。
抗えぬ運命ならば――
いっそ、全てを壊しましょう。
貴方を苦しみから救うために。
二人きりの世界へ旅立つために。
すべては……愛の名のもとに。
ひらり、ひらり。
私の手のひらで散るものは、
溶けゆく雪兎でしょうか。
散らされた紅の花でしょうか。
それとも――
貴方の最期の鼓動でしょうか。
3/3/2025, 5:50:12 PM