飛べない翼
当然のように使っているこの翼は、ただ滑空するだけの偽物だ。再び飛び上がることも、複雑な動きをすることもできない、飛べない翼。まるで俺みたいだ、なんて笑った日があった。昔は飛べたのだ。ここに来る前、揃いの蜂蜜色と2人で肩を並べていた頃。もう結構経っちゃったな、なんて、見上げた空は変わらずの澄んだ群青色で、それすらどこか白々しい。この話題になると、誰かしらが悲しそうな顔をする。相棒なんかその筆頭だ、その顔も可愛いのだけれど。
ぐっ、と。思いっきり伸びをした。いつからかの、気分転換のルーティン。気分が上がるかと言われれば否だが、多少暗い思考を外側に沈めておける。
いつだったか、とある神様が言っていた。兄弟というのは、血縁でも何でもなく、それ以外の何か不可思議なもので繋がっているものだと。双子であるのなら尚のこと、と優しく笑って付け足して、何事も無かったように世間話に戻っていった。
そうなのだろうか。信じていいのだろうか。もう会えないかもしれない、なんて、月の下でひとり涙に濡れた日も、諦めようと無理やりに笑った日も。そういう努力全部が、水の泡になってくれやしないだろうか。
今日も変わらず朝日は昇って、心地いい風に背を押されるまま歩き続ける。ひとりでなくてよかった、なんて隣を見れば、何も知らない非常食はわけも分からず笑うのだ。それにつられて笑うまでが、いつもの僕ら。
穏やかで平和な、無為の時を愛してしまった、薄弱な自身へ。止めない足が一種の諦めだとしても、それはきっと、あるべき虚無だと信じている。
11/12/2024, 1:48:37 AM