『カラフル』
ガラスの足つき皿にディッパーで掬ったバニラアイスがポンと載せられてウエハースも添えられている。
「ねぇお母さん。これで終わり?」
続きがあると知っているから尋ねてみると、母はにんまりと笑って戸棚から魔法の粉を取りだした。チョコレートでできたカラースプレーに銀色のアラザンが振り掛けられておやつのアイスクリームが完成する。
「さぁ、召し上がれ」
「いただきます!」
母にはいろんなことを教えてもらった。魔法の粉を欲張って掛け過ぎるとアイスの味が台無しになるとか、おやつをもうちょっと食べたいと思うところで止めておくとお腹に優しいとか。
百円均一でも製菓材料が並ぶようになってから久しぶりに魔法の粉に遭遇した。懐かしさに釣られてスーパーでバケツサイズのバニラアイスとウエハースを買って帰る。カレースプーンで格闘しながら味気ない皿にアイスを載せ、正方形のシール付きウエハースを半分に割って添える。なんとも映えないアイスにカラフルな魔法の粉を振りかけてもおやつのアイスは映えないままだった。
「……でもおいしいな」
懐かしい味を望んで再現したそれは思い出の味がした。
5/2/2024, 5:43:00 AM