田中 うろこ

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 あの時僕に送ってくれた白いスニーカーは、底が少し磨り減ったまま、靴箱の一番上に飾ってある。履く度に真っ白がチラついて、浮かれた気持ちになると同時に、それが汚れていくのがどうにも許せなくなってしまったから。明日も仕事で君に会う。その時には、いつもの革の靴を履いていこう。

「おはよ、一昨日ぶりだね」
「……ん、おはよ」
やっぱり向こうから声をかけてくるのは変わらない。僕たちの立つ場所の名前が変わっても、互いに抱く熱情が変わっても、愛情が深いのはいつも君だ。あの日と変わらないリップクリームを片手に、ソファーに腰掛けている。
「おれがあげた靴履いてくんねーんだ」
「アレ白いから、汚したくないのよ」
足元を覗き込むと不機嫌そうにむくれる。その表情すら可愛らしくてたまらない。

5/26/2025, 7:26:04 AM