REINA

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1年後



あの日、桜の舞うあの丘で初めて告白をした。

「好きです」

告白をしようとは微塵も思っていなかった。
ただ貴方の横顔がとても綺麗だったから、貴方の向ける笑顔が眩しかったから。
いつか私以外の誰かのものになってしまうんじゃないかと思ってしまって、私はありのままの感情を呟いていた。



彼は散りゆく桜のような、消え入りそうな声で、

「…ごめん」

と一言呟いた。




あの日から1年後。
桜の舞うあの丘へと、私は向かって歩いていた。


思い返せば、告白後も友達として接してくれた彼には感謝している。
むしろ前より仲良くなったのかもしれない。

相手には私の気持ちは気付いてしまっているから、気負うこともなくなった。
もう振られてしまったからこそなのか、自然体でいられたのかもしれない。

とは言え、貴方への想いは消えることは無かった。
決してこの恋が叶うことはないけれど、この気持ちは私が忘れるまで育てていこうと思ったからだ。

もしかしたら、貴方に私以外の彼女が出来て、それがどんなに悲しくて淋しくて苦しくても、貴方への想いを消すことの方が余程辛かった。

卒業が間近に迫る中で、貴方との楽しい日々は良い思い出になるだろう。



もうそろそろあの桜が見えてくる。
私にとっては始まりとも言える桜。



「……っあ、」



と思わず声に出すと、桜の樹の下にいた私の想い人は振り向いた。



「おはよう」


涼やかな声。
この人のこの声、私はやっぱり大好きだ。


「おはようございます」

一言発してから、1年前と同じ気持ちになった。

「やっぱり、貴方が大好きです」






6/24/2024, 12:40:23 PM