星になる
暗転したスクリーンに、白い文字が静かに流れていく。自分の名前はいつだって上から二番目。主役のすぐ下。
一人きりの部屋でアタシは背もたれに身を預けたまま、それを見つめていた。
エンドロールは必ず最後まで見る。自分が関わった仕事の終わりを途中で切り上げる気にはなれない。
助演俳優賞。
この映画でアタシは、それを手にした。
思い出す。照明に照らされた壇上。名前を呼ばれ、拍手の中を歩いた数歩。
賞を受け取る手は驚くほど落ち着いていた。
やるべきことをやった、その確信だけがあった。
演技力、存在感、作品を締める最後のピース。
そう評された言葉の一つ一つは、今でも耳に残っている。
それらはすべて、助演としての評価だ。
主役を支え、物語を崩さず、観客の感情を導く役割。
アタシは、その期待を完璧に果たしてきた。
俳優という仕事に誇りがないわけがない。
セリフのない瞬間にも意味を持たせ、立ち位置一つで関係性を変える。
どんな役であろうと与えられた枠の中で、できることはすべてやってきた。
完璧に演じる以外の選択肢を自分に許したことはない。
それでも、スポットライトは決してアタシを正面から照らさない。
「陰の実力者」
その言葉は称賛であると同時に、見えない境界線だった。
影でも輝いている?
違う。アタシは影で満足するために、ここまで来たんじゃない。
星になりたい。
夜空の真ん中で、迷いなく見上げられる存在に。
物語の始まりから終わりまで、名前を呼ばれる役に。
エンドロールが最後の一行を流し終える。
スクリーンは完全な闇に沈んだ。
その闇の中でアタシは一度だけ息を吐く。
アタシが影?
笑わせないで。
アタシは次こそ、星になる。
12/14/2025, 4:15:13 PM