波音に耳をすませて
攫われていくのをただ待つ
血液の流れる音にもよく似た雑音は、懐かしくも心地よく、そして不愉快だ
生きた心地を思い出す
自分の輪郭に縛られる
例えば、そうだ
水面の声を一身に受けとめどなく打たれる、
湖の孤独な岩のように
押し寄せる世界によって、自分の姿形を実感できる
それと同時に、今にも崩れそうな膝と世の不条理を今一度認識できる
そうして、生をしかと真に受けて、そうしてやっと、明確な死を遂げられるのだ
全てを現状を受容して初めて、完璧で完全に死ぬことが出来るのだ
今夜は朔日だ
常日煩わしい小艇も水平線も、今はなりを潜めている
なんの光も反射しない波が漆黒を糧にこちらを呑み込もうとやってくる
これこそ望んでいた、完璧で完全でつまらない世界だ
あぁ、本当に素晴らしく、画一的だ
飽きた
こんな風に悟ったふりして語った所で、結局待つだけでは終われる筈もない
しかし行動する気力も体力も残っちゃいない
だからまた、
波音に身を委ねる
寒いなぁ
7/6/2025, 7:02:34 AM