雪羊

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二言目には「暑い」と言いたくなるような朝、換気のために職場の窓を開けて回っていたらスズメが入ってしまったと同僚が慌てていた。3人で外へ誘導しようとしたものの、スズメはこちらの意図とは真逆に飛び回る。
ふと見ると、スズメが空いた窓の際に留まった。そのまま外に飛んで行け、とわざと音を立てながら近寄っていくが、どうしたことか今度はちっとも動かない。
カーテンでそっと押してみる。動かない。
「どーしたー?」と至近距離で声をかけてみる。やっぱり動かない。
ならば、と思いきってスズメの胴体を包み込むように手で掬い上げた。
スズメに触ってしまったという感動の混じった驚きと共に(私は鳥が好きな方だ)、思いがけず温かいことに二度びっくりする。後から知ったが、スズメは体温が42度くらいあるそうだ。そして窓の外へ向けて、飛んでくれよと思いながら、そっと放る。
果たして、夏の湿気で重たい空気のなか、スズメは飛んでいった。

重さを感じさせない羽ばたきで飛ぶ鳥は、しかし色々なものを犠牲にしているらしい。軽量化のために骨は細く中は空洞になり、飛ぶために必要な筋肉以外は極力省く。足などはほとんど骨と皮と腱だけだ。文字通り骨身を削って飛んでいる。(ただしニワトリは色々と例外。)

飛べたらどんな気分だろうと時折思ってみたりはするが、飛ぶのも楽ではないようだ。それでも、高く高く飛んでいったスズメを見送った時の羨望とも憧れともつかない思いは消えるわけではない。

お題:高く高く

10/15/2022, 3:59:05 AM