『真昼の夢』
窓を叩く雨の音で目が覚めた。高校生の頃はよく夢を見たものだが、最近はぱたりと見なくなってしまった。昨日の昼は影さえも輪郭を失うほど太陽が照りつけていたはずだが、今日はじめじめと不快な心地で目が覚めた。
覚めかけた瞼の隙間に記憶と一種の焦燥感のようなものが混ざり合う。身体を起こして自室の机に目をやると、開かれたままのポケット六法と昨夜印刷したレジュメが乱雑に散らばっているのが分かった。
そういえば明日は民法のテストだったか。
卓上のデジタル時計には15:07と表示されている。やってしまったと思ったときにはもう遅い。時というものは残念なことに不可逆で、明日の今頃には白い答案用紙に絶望していることだろう。今すぐにペンを握るということが唯一私に残された生存ルートなのかもしれないが、時計を見たことで逆にやる気を損なった。まだぼんやりとした頭で、現実との境界をゆらゆら彷徨いながら考える。
よく聞く話だが、昼寝には記憶の定着と集中力を高める効果があったはずだ。理性は寝るなと叫んでいるが、身体はその恩恵を受けるがため睡魔で抵抗している。きっともう一眠りすれば、体内で小さなエネルギーの再起動がなされて、カフェイン無しでもすっと覚醒するだろう。久しぶりに夢でも見たい気分だ。
エアコンを除湿で設定したのち、タオルケットを被り直して再び瞼を閉じた。
7/17/2025, 7:32:57 AM