(※GL表現あり)
「たまには私がやっても良いでしょ」
「えー?」
返事を待たずに、私はトモカの後ろに回り込み、彼女のセミロングの髪に櫛を入れた。
「わーなんか恥ずかしっ」
「私のは毎朝触るくせに」
美容師のトモカはオンでもオフでも人の髪をいじるのが好きで、とりわけ私のは彼女のお気に入りだった。
「みーちゃんのはツヤツヤだからいーの。ウチ枝毛だらけっしょ。そういうの何だっけ、高野豆腐の白パンツ?」
「紺屋の白袴ね」
「そーそーそれそれ、コーヤコーヤ」
「パンツはないわ」
「えっじゃあコーヤはパンツも藍色ってこと?」
「知らん」
トモカの髪はサラサラだ。アッシュグリーンの毛束に触れてみれば、さらさらと指の間をすり抜ける。淡く甘やかな大人の香り。
「二つ縛りの三つ編みにしようかな。先っちょにピンクのリボンつけて」
「あはは、こないだの。根に持ってるのウケる」
「ほどくの大変だったんだからね、あれ」
外で鳥が鳴いている。レースカーテン越しの朝の日差しは柔らかい。
サービス業のトモカと会社員の私の休みが重なることは珍しくて、だから今日は少し特別な日。
彼女の髪をかきあげる。白く光るうなじが美しくて吸い寄せられて、思わず唇を寄せる。
トモカが振り返り、私に応えた。
【お題:たまには】
3/5/2026, 12:34:28 PM