声が聞こえる。
俺は能力者と呼ばれていて、いわば霊能者とか巫子とか。そういう部類のちょっと変わった人間。
だから色々見えたり感じたりするわけだけれど、「あの声」だけは正体が分かっていない。
俺には兄が2人いて、そのうちの上の兄さん、リシャメンといるときに「声」が聞こえる。
気になりすぎているので、今日は正体を突き止めて行こうと思う。
「リシャ」
「どした」
「『声』と話したいんだけど…」
「あーなんか聞こえるんだっけ、いいよいいよ。おれもちょっと怖いし正体聞いてよ」
そう言いながらリシャはちっとも怖そうじゃない。強いのだこのひとは。
「声さん、こんにちは」
〈えへへ、おはよう!おはよう!〉
声さんはこのように気まぐれに喋る。声質的には女児のようだけど、そうだとしたらリシャ兄さんがロリコンの上何か因縁があって兄さんが声さんを殺してそして魂が取り憑いた…という予想ができてしまうが…。
「リシャ…ロリコンだっけ」
「待て待てなんでそうなった」
焦る兄。
「声さん、あなたの名前は?」
〈ない!ないよお!〉
うーむ分からない…。
「じゃあ、取り憑いてるこの男の人とはどういう関係なのかな?」
複雑そうな顔のリシャ。
〈ええ、このひとー!?この人はね、この人はね、すきなひと!!すきなの!!〉
「好きな人?」
〈だいすき!だってイケメーンだもの!〉
「…ちなみに、この人に殺されたりした…?」
ぶんぶん首を横に振るリシャ。
なんか怪しいんだよなあ…。
〈ころされ?あはは殺されてなんてないよお!イケメンだから取り憑いちゃったったったのよ!あたし妖精なんだけどね!サボって隠れてるのお!〉
なるほど。
姿を見せないわけだ。声さんは、仕事をさぼってイケメン鑑賞をしている妖精らしい。
「……声の人なんだって?」
「リシャごめん、ただ妖精がイケメンだから取り憑いちゃっただけらしい」
「なんだよ!何もしてないはずなのにめっちゃドキドキしちゃったじゃん」
俺も兄が変態かもしれないと思ったら変に緊張してしまった。
「モテるねえ」
「はいはい俺顔がいいですからね」
むかつくなあ。
〈あたし追い払われる?めいわく??〉
「ううん、そこにいていいよ。いいよねリシャ」
「お、おおん…」
恐らく嫌なのだろうがしぶしぶ頷く兄。よし。
「ほらイケメンもいいってよ」
〈やった!やった!すきすき!!じゃあじゃあ、友達も呼んでくるね!!〉
「え」
「え?えって何イグ怖い何何」
残念ながら、その日から声が増えた。
9/22/2024, 1:11:50 PM