木漏れ日が暖かいこのカフェは、
人と人とが巡り合う場所。
そんな巡り合いを見届ける事ができる
このカウンターの内側を私は気に入っている。
木が軋む音と鈴の音。お客様のご来店だ。
「いらっしゃいませ」
1人のスタッフが制服を着た女子高生らしき2人組を案内した。
その間に私はお冷とカトラリー、
それから飲食店らしからぬ紙とペンを用意して席へと向かう。
「失礼します。こちらに紙とペンを置かせて頂きますね。ご記入頂きましたらスタッフにお声がけください」
女子高生らしき2人組は愛らしい表情で返事をくれた。
この2人も恋をしているんだな、と思った。
このカフェは何故か恋愛成就で有名だ。
始まりは、スタッフのしまい忘れた紙とペンを、
席に常備されたものと勘違いしたお客様が、
その紙とペンで愛を綴り相手に渡したところ、見事恋が実った、なんて出来事だった。
噂はたちまち街へ広がり、いつからか恋愛成就カフェなんて異名がついていた。
「すみません」
「お伺いします」
声をかけられ席へ向かう。女子高生らしき2人組の席だ。
「記入できました」
「ふふ、ありがとうございます。店内の結び木に結ばれますか?それともお持ち帰りされますか?」
恋愛成就カフェに乗り気オーナーは店内に結び木まで用意したのだ。愉快なオーナーだ。
2人は「どうしよっか」「どうしようね」なんて少しのアイコンタクトをとったあとで、持ち帰ることを選択した。
「かしこまりました。そうしましたらここからお好きな封筒をお選びください」
「はーい」
恋をしている2人の女子高生が愛らしくていつもより笑みが溢れてしまう。
1人は淡いピンクの封筒を、もう1人は静かな水色の封筒を選んでいた。
ケーキと紅茶をお供に2人は小声で興奮気味に会話を続けていた。耳を澄ませて見たけれど内容が聞き取れなかったのが残念だ。
日が沈む前に2人はお会計を済ませた。
「お忘れ物はございませんか?」
「はい!ケーキ美味しかったです」
手には封筒がきちんと握られている。
私は扉を開けて2人を見送った。
2人の恋もどうか実りますように。
「ありがとうございました。
カフェあいことば、またのご来店をお待ちしております」
10/27/2024, 7:41:53 AM