『一年後』
四月に卒業して行った先輩が、一年後の未来から遊びに来た。
「ちょっと何言ってんのか、よくわからないです」
「あはは、混乱してる」
爽やかに笑う先輩は確かに大人っぽくなっていて、一年後から来たと言われても信じてしまいそうだ。
「で、何しに来たんですか」
「後輩が立派に部長を務めているか、確認に来たんだよ」
「わざわざ一年後から?」
「うんうん、本来の僕は初めての大学生活にてんてこ舞いで、後輩を気にする余裕なんてなかったからね」
言われて確かに先輩ならそうなってそうだと納得しかけた。
いやいや、そうしたら先輩が未来から来たと認めてしまうことになる。
「だったら先輩の時間軸で、普通に遊びに来れば良いじゃないですか」
「そこにはもう君はいないだろう?」
その言葉に悔しくも嬉しくなってしまう。
頬が熱くなってくるのを感じた。
「バカじゃないですか! それだけの為にわざわざ未来から来るなんて」
「いやいや、実はそれ以外も阻止したいことがあってね」
なんだやっぱり、会いたいから来たってのは嘘なんだ。
嬉しく思った気持ちが急に萎んで、今度は恥ずかしくなってきた。
「それで、阻止したいことって何なんですか?」
「とても言いにくいんだが……来年、この超常現象研究部は新入部員がおらず、廃部になってしまうんだ」
「は?」
「だから新部長の君は絶対新入部員を確保して、この部活を存続させてほしい!」
先輩はそれだけ言って、去年先輩と一緒に遊び半分で作りあげたタイムマシンに乗って未来に帰って行った。
「マジで未来から来てたんだ……」
誰もいなくなった部室で、私の言葉だけがむなしく響いた。
5/8/2024, 1:08:52 PM