海月

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「 始まりはいつも。」 / 実話です。

「おはよう!今日もお互い頑張ろうね!」

彼と付き合い始めてからのLINEは、いつもこのメッセージから始まっていた。たとえ前の日に少し喧嘩しても、気まずい沈黙が流れても、朝には彼から「おはよう」と届く。その一言が、私の1日の始まりを彩っていた。

だけど、その日は違った。私たちの別れを決めた翌朝、スマホを見ても「おはよう」の通知はどこにもなかった。胸が少し痛んだ。私が別れを告げたのだから、当然だと言い聞かせたけれど、彼のメッセージがないことで、こんなにも心が空っぽになるなんて思わなかった。

あの日、放課後の教室で、私は彼に別れを切り出した。彼女――私の幼なじみ――が彼を好きだと知ってから、私は何もかもが怖くなっていた。彼女との友情が壊れること、そして、彼にこのことを知られることで、彼が何かを失うかもしれないこと。彼の隣にいるべきは私じゃないと、どこかで思ってしまっていた。

彼は何も悪くなかった。だからこそ、彼に迷惑をかけたくなかった。だから私は「ごめんね、もう別れよう」と言った。涙をこらえながら、私は彼に背を向け、教室を飛び出した。背後で彼の声が聞こえたけれど、振り返ることができなかった。

「どうして、こうなったんだろう……」

あの夜、ひとりでベッドの中で泣きながら、彼との思い出を思い出していた。沖縄の浜辺で告白された瞬間、手を繋いで歩いた帰り道、いつもくれる優しい「おはよう」の言葉。全部が私にとっての宝物だった。そして、その宝物を自分から壊してしまったのは、私自身だった。

次の日も、またその次の日も、彼の「おはよう」は届かなかった。私は彼と離れたことで、ようやく気づいた。どれだけ彼が私の世界を輝かせてくれていたのかを。教室で目が合った時、彼は何も言わずに微笑んでくれたけれど、その微笑みの裏にある寂しさを感じた。

「好きでいられたのに……」

彼との日々を思い出すたび、胸が締めつけられる。お互いに好きだったのに、どうしても一緒にいることができなかった現実が、私にとってはあまりにも重くて苦しかった。でも、それでも彼と過ごした時間は本当に幸せだった。

私たちは両思いのまま、別れを選んだ。だけど、彼との「おはよう」がなくなった朝を迎えるたび、私は新しい始まりを探していた。あのメッセージがもう届かないことが、私にとっての本当の「始まり」だったのかもしれない。彼がいなくなっても、私は自分自身の新しい一歩を踏み出すために、あの「おはよう」を心の中に残していた。

そして今も、ふとした瞬間に思い出す。「おはよう、今日もお互い頑張ろうね!」という彼の優しい声を。

その言葉は、これからも私の中で響き続ける。

10/20/2024, 12:09:26 PM