récit

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彼女は子ども時代、さみしくても涙をこぼすことができなかったんだ。

まるで小さな玄い雲が空を仰ぎながら雨を我慢しているかのように。
本当は泣きたい気持ちが渦巻いていたかもしれないのにね。

彼女はとても負けず嫌いで勝ち気な少女だったんだよ。

でも大人になるにつれて、人生は勝ち負けではないことに気づいていく。

青い夜が訪れ愛の哀しみを知り、朱い昼の明るさの中で温かさや輝きを感じることで、彼女はやっと心から泣くことができるようになった。

涙は、彼女の心のひび割れを癒す優しい雨になった。

充分な時が経ち、さらにもっと大人になった彼女は、人生の意味を知り世界は白く穏やかになる。

そうしてきっと明日もまた、世界に感謝を捧げながら涙を流すのだろう。

「きっと明日も」

9/30/2024, 10:59:23 PM