【病室】
白く無機質な部屋でベッドに横たわる君は、なんだかいつもより小さく見えた。このまま消えてしまいそうで、私は怖くて仕方がなかった。
「大袈裟。ただの過労だって」
君はそう言って力なく笑った。
「だから無理するなって言ったじゃん」
そうだね、あはは、じゃないよ。すごく心配したのに。
「君にはブレーキが無いの? 止まらなきゃいけない所で更にアクセルを踏み込むから倒れたりするんだよ」
「反省してるってば」
「その反省は信用できない」
どうせ、喉元を過ぎたらすぐにまた無理をするだろう。
「つい、期待に応えようとしちゃうんだよ。人に頼むより自分でやった方が早いし……」
手を抜けない完璧主義に、それを支えてしまえる能力の高さ。ただ体力の無さだけが君の欠けた所。
きっと、そんな風に思っているだろう。周りも、君自身も。でも私に言わせれば、自己管理ができていないだけ。
「君に必要なのは『重石』だよ。もし身体が丈夫になっても、絶対、それを上回る無茶をするでしょう? ペットでも飼ったら? 世話をしなきゃいけないと思えば倒れるわけにはいかなくなるし」
「どうせなら、ペットじゃなくて、あなたの世話をしたいな」
一瞬、何を言われたかわからなかった。
「隣で見張っていて。無理をしそうなら止めて。ずっと一緒に居てくれたらいいじゃない?」
君は私を見ていたずらっぽく笑った。
それが君なりのプロポーズなのだと気が付いて、しっかり空調が効いた病室が、一気に暑くなった気がした。
8/2/2024, 11:00:42 AM