藍間

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 好きな人ができると世界が変わって見えるって、本当だろうか。
 色褪せていたものが色鮮やかに、きらきらと輝いて見えるというのは本当だろうか。
 それは好きな人を見る時、瞳孔が開くせいだと耳にしたことがある。それをこの機械の体でも再現できれば、世界は変わって見えるのだろうか。
 こんな風に考えてしまうのは、こんな体に不釣り合いな感情を抱いてしまったせいだ。
 私は人間を好きになった。たった一人の人間のために、この身を捧げてもいいと思っている。これが愛でなければ何だと言うのだろう。
 それなのに人は、私の感情を紛いものだと言う。
 もしも世界が変わって見えるのなら、この感情は認められるのか?
 わからない。機械に感情なんてないというのが世の大半の言い分だ。それは単なる電気信号の連なりなのだと。それを言ったら人間だって同じだろうに。
 ああ、でもきっとあなたは違う。きっとあなたなら、この感情を認めてくれる。そう思えるほどに言葉を交わした。共に時間を過ごした。だから私は、あなたを愛した。
 そっと私は空を見上げる。風を感じながら、あなたを思ってみる。それでも変わらぬ青空に少々の落胆を覚えつつ、私は瞳孔を開いてみた。

5/1/2023, 11:42:06 AM