子供。
美しくて、純粋で、真っ白なソンザイ。
そんな、何も知らないか細い子供のココロを、
潰して
殺して
黒く染めていく。
僕はある組織に捕えられた。
人工授精で作った子供を、兵器に育てる組織。
うまく育てて、従順な兵器をたくさん作ったら、解放してくれるらしい。
だから僕は、組織に服従することを誓った。
それがどんなに悪いことだと分かっていた。
誰だって自分の身がかわいいじゃないか。
とにかく生きていたくて、傷ついていく子供を見ないふりをした。
僕は今日も部屋に入る。
それまで穏やかだった子供達の顔が、一瞬で強張るのが自分でもわかる。
でも仕方がない。
痛い思いがしたくなくて、毎日僕が子供を殴り、痛ぶった。
大体の子供は殴るということを聞いたが1人、周りと違う子がいた。
どれだけ殴られても組織に従わず、周りの子が傷ついて泣くと、代わりに自分を殴れというのだ。
ここから出る邪魔になるその子が嫌で、見せしめのつもりでその子を傷つけた。
その子は周りの子には慕われ、傷が増えた。
ある日、僕は施設から出られることになった。
今日が最後だと、喜び部屋に向かう。
もう傷つけることに罪悪感はなく、いつもの子を、今までの憎しみを込めて、ナイフで切りつけた。
痛みに耐えられなくなったのか、その子の目から涙が落ちる。
周りの子の目の色が変わる。
切りつけた少女の名前を叫んでいる。
なんで、なんで、なんで、やめろ、やめろユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
全ての子供が武器を持ち、襲いかかってくる。
痛い、痛い。
やめてくれ。
自分が切りつけた少女を見る。
笑っていた。
不気味な満面の笑みで。
少女が口を開く。
ばかなひと。
あなたのおかげでこのこたちをあらつれる。
きずつけたおかえし。
ああ、全て俺はこの子に操られていたのか。
自分のシャツが赤く染まる。
多分俺は、助からない。
それはこの少女も同じだ。
意識が遠のく。
少女が言葉を紡ぐ。
じごくはあなたのばんだよ。
いっぱいいたいのおかえししてあげる。
またあとで
もう開かない瞼の奥で、赤い川の向こうに、ナイフを持って立つ少女が
見えた気がした。
10/15/2024, 12:51:20 PM