撫子

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 朝露に濡れる野原に立ち、あたりを見回す。
 今日は何色のお花を中心に据えようかしら。

 摘みたての瑞々しい花たちを、茎を切り落としてから、優しく洗ってあげる。
 水流は花びらを傷つけぬよう、せせらぎのごとき柔らかさで。土を落とし、清らかに匂うままに。

 すすいだ花々を、彩り良く硝子の皿に盛り付けていく。
 中央には鮮やかな太陽を模したひまわり。そのまわりには、青空の色のネモフィラを敷き詰め、その上に雲に見立てたカスミ草の白を。
 あとは仕上げとして、全体に蜂蜜をトロリとまわしかければ、今朝のサラダは完成。

 さあ、ベッドの中で朝霧のようなヴェールを纏いながら、まどろんでいるであろう、美しいひとを起こしに行こう。
 思い立って、余っていたネモフィラを一輪つまみ上げ、くちづけをひとつ。これを、なかなか起きない彼女の、そよかぜのような髪に飾ってあげたなら、きっと芳香につられて瞼を震わせることだろうから。
 私の大切なプリンセス。今、あなたのための花畑を携えて、お側に参ります。

(私の当たり前)

7/9/2023, 6:25:16 PM