雫
その日の夜は雨が降っていた。
「天気は……」
今日も夕方に雨が降るおそれがあるらしい。
「いってきます。」
日に照らされ宝石のように輝いている草についた雫。
まだ、雨の香りが残っている空気。
今日は、何があるのだろう。
かすかに期待しながら歩いた。
その日は散々だった。
階段から落ちる、
お気に入りの物を無くす、
冤罪をかけられる、
陰口を聞く。
あぁ、今日は何をしてもうまくいかない日だ。
たまにはそんな日もあるけど、流石に、つらい。
ポツン
ザーッ
私の心を写したかのように雨が降り出す。
鞄から傘を探す。
「……あれ、ないっ、うそ。
もう、やだ。」
気付けば、涙が出ていた。
雨で、よかった。
泣いているのは見られたくないから。
ザッ、ザッ
雨が当たらなくなる。
振り向けば、
「傘忘れたの?」
と、いつもの調子で聞いてくる友達。
「うん」
「あれ?泣いてる?」
もう何に泣いているのかわからない。
「雨だからっ、雫だからっ。」
そうすぐにバレる嘘を並べながら歩き出す。
悪いことばかりで、失敗ばかりでも
案外、優しさはあった。
「ありがと。」
「急に?
まあ、どういたしまして。」
互いに笑いながら雨の中を歩いた。
家に近づく頃には雨は止んでいた。
4/21/2024, 11:37:14 AM