【風鈴の音】
久しぶりに実家に帰ると少しだけ開けられた小さい窓の前で風鈴が揺れていた。
昔より背が小さくなったように見える母は麦茶を出して、お姉ちゃんが新婚旅行のお土産でくれたの、と笑った。
光のひとすじも通さないような鉄器の風鈴。それは見た目からは考えられないほど澄んだ音を時々響かせる。
外で子どもの声が聞こえて、楽しい記憶も苦い思い出も一瞬で浮かんで消えた。
グラスの中の氷が音もなく溶けていく。
いつか母に家で待つあの人を紹介したら受け入れてくれるだろうか。
汗をかくグラスを見つめて、ふとそんなことを思った。
7/12/2025, 4:43:58 PM