#81 夜景 / 花畑(9/17) / 空が泣く(9/16)
「ずっと、君に見せたかったんだ」
小さな白が一面に広がる花畑。
それは星のごとく輝く。
ただし、夜の間だけ。
だから夜間外出を渋る君の両親を必死に説得したんだ。その甲斐はあった。
言葉も忘れて見入る君の横顔。
視線を周りに向ければ、
満天の星空の下、丘の上に立つ今。
それこそ星空の中に浮いているような。
-こんな景色が見られるほど
生きられると思わなかった
思わずこぼれたような小さな呟きに、
仄かな光に照らされるほど潤んだ瞳。
「とてもきれい…ありがとう」
「いいんだ。泣いているの?」
太陽の下なら、
真昼の空のような色が見られるだろうな。
「そうよ、あなたが泣かせたのよ。ひどいわ…」
心が締め付けられる。
「それは困った。どうしたらいいのかな」
「さて、どうしようかしら?うふふ…」
ぽろぽろと流れる涙もそのままに笑う君が、
あんまり綺麗だったから。
涙を拭おうと頬に向かっていた手は、
少し方向を変えて。
空が泣くのを、
もっと近くで見たかったんだって言ったら、
君は怒るかな。
近づく距離。
答えは、瞳と一緒に目蓋で隠された。
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時間が取れず空いた分までまとめて。
花畑のような夜景か、夜の花畑か、
現実を直視するのが辛いので幻想風景にしました。
空が泣く部分は当初「遠くで雷鳴が聞こえるけど知ったこっちゃない」でしたが、彼女は幼少病弱だったから雨は無視できないと彼が急に言い出し、こうなりました。
雨が降ってきて帰れなくなるトラブルも良いと思うんですけど。健全ですね。
9/19/2023, 1:04:55 AM