しきぶ

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閑寂な部屋の中で、小さな影が一つ揺れている。

薄いカーテンの隙間から差し込む月明かりは僅かに部屋の輪郭を示すばかりで、真四角の部屋は依然暗い。
明るい窓際では枯れかけの花が、頭を垂れて水をねだっている。
その部屋の真ん中で、男が一人死んでいた。
何も無い部屋で、傷もなく、まるで以前からそこにあったかのように綺麗に横たわっている。
影はそれに静かに爪を立て肉を引き裂くと、遠慮しがちに噛み付いた。
首に巻かれた鈴が、乾いた音をたてる。
凛凛とした寒空には、ただましろの月だけが凛と咲いていた。

1/8/2025, 2:46:03 PM