「冷たいね」長い指を持ち上げそう呟いた。答えは無い。「起きてよ」指から手首へ。そして肘へ。ゆっくりと持ち上げたそれを自分の頬へ押し当てる。「アンタがいない世界でどうやって生きたらいいのさ」答えは無い。眠っているかのように動かない彼に覆い被さって、身勝手な想いをぶつける。「いつもみたいに馬鹿だねぇって言ってよ」声が返ってくる筈も無く。最愛の人を失くした世界は、真冬の海より冷たくて残酷だった。END「凍える指先」
12/9/2025, 2:49:41 PM