楠征樹

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 ああ、すっごく良かったな……
 客電が点灯されたライブハウスで私は立ち尽くしている。私の最推しバンドのラストライブが、今終わったのだ。
 先ほどまでの熱狂は雲散霧消し、ステージには機材とセンターにポツンとマイクスタンドが立っている。
 でも、私には、そこにまだあなたが居るみたいに思えて。
「トモヤ!トモヤ!トモヤ!トモヤー!」
 無人のそこに向かって、全力のメンバーコール。今日で最後なんだ、感情の出し惜しみなんて、無しだ。
「トモヤーーー!」
 すぐ隣から、私と同じくらいの大声が。隣を見ると、泣きはらしてメイクなんかグチャグチャな女の子がいた。
 きっと私もおんなじ顔してる。
 ふと、目があった。何かが、通じた
「「トモヤ!トモヤ!トモヤ!トモヤー!」」
 気が付いたら、良く分かんないけど、二人で手を繋いで、思いの丈を大声で叫んでた。
 息を切らした瞬間、退場を促すアナウンスが流れる。
「出ようか」
 彼女が声をかけてきて、
「うん」
 私が応えて。
 ハコから出て、外に貼ってあったライブのポスター見上げて、そしたら何かがこみ上げてきて、彼女と抱き合って、泣いた。

 あの日、私と心が通じあった彼女は、今も隣にいる。

1/22/2026, 10:54:23 AM