毎日の散歩がルーティンだが、いつも同じ時間、同じルートを歩く人(や犬)は多いらしく、いつも大体同じ場所ですれ違う飼い主(女性)とワンコ(ポメラニアン)がいる。
人懐っこいワンコで、俺を見つけると短い脚を懸命に捌き、こちらに向かってくる。その姿がなんとも言えないくらい可愛いのだ。
飼い主の方もとても感じがよく、初めは一言二言だったが、今ではしばし会話をするようになった。
(その間のワンコは無防備にこちらに腹を向け、撫でられるがままだ)
そんな話をしたら、目の前の男が急に無口になった。
「なんや、お前も犬好きやろ?」
今度一緒に散歩行かん?…そう繋げようとしていた言葉を飲み込み問うと。
「あんま優しくしたらあかんよ。勘違いされたらどうするん」
「アホ。女性は既婚者や」
「ちゃうよ!そのポメに!」
こいつは一体何の心配をしてるのか、と思いつつ耐えきれなくなって笑ってしまった。
翌日、一緒に散歩に行き、すっかりポメに魅了されデレデレ顔で撫でる男を見て(そんなほにゃけた顔晒すなや)と思ってしまったのは内緒である。
【お題:優しくしないで】
5/2/2024, 3:00:14 PM