のねむ

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君の奏でる音楽が好きだった。それは、楽器とかそんなのでは無くて。君の体から流れる音楽が好きだった。衣服の擦れる音、笑う声も泣き声も、心臓の音も。
君から発する音全てが、私を魅了して離さなかった。離れなかった。離れられなかった。

だけど、いつからか君の奏でる音楽は少しずつ小さく、少なくなった。
それに私は気付かなかった。心地良さだけを信仰していたから。気付いた、いや、変わっていくと認めてしまったら、結局私は君の音楽に少しずつ耐えられなくなってしまうだろう。その未来が、もう既に見えていた。
だから、私がこの音楽に終止符を打つことにした。私は指揮者で君は演奏者。2人でひとつの作品になる。ほら、もうそろそろ終わりの時間だ。拍手喝采が聞こえるだろう。
演奏者がいて、指揮者がいる。指揮者がいて、演奏者がいる。
それが私の全てだ。


いつからから、鳴り響いてた音楽は止み、指揮者も観客も何もかもが居なくなった。
なーんてね。音楽っていうのは語り継がれるものだから、きっとまた同じ楽曲が流れるさ。

8/12/2023, 11:11:29 AM