止めようとしても溢れ出てくる涙を袖で乱暴に拭ってから、僕はみんなのもとへ戻った。
仲間たちはちらりとこちらを見た。心配そうな目だった。声をかけるかどうか、逡巡しているのが表情からわかる。しかし結局何も言わないことを選んだようだった。僕は最後列でみんなの背中と、パフォーマンスを披露する他のチームの様子をぼんやりと見ていた。
そのとき、背後からトントンと肩を軽く叩かれた。後ろを振り返ると、幼馴染が立っていた。
僕の顔を見た瞬間、彼はぎょっとしたように目を見開き、小さな声で「……お前、ちょっと来い」と言って、僕の腕をつかんだ。強引すぎない、けれど決して拒めない力で引っ張られ、僕は体育館を後にした。
人気のない廊下で、彼は立ち止まり、真っ直ぐに僕を見つめる。
「……何があったんだよ」
「何も……」そう言おうとしたのに、声にならなかった。代わりに、もう枯れたと思っていた涙がまた、音もなくあふれてきた。
彼は何も言わなかった。ただ、ぎゅっと唇を結ぶと、僕の肩を引き寄せ、そのまま抱きしめた。
僕よりひとまわり大きな体が、優しく包む。背中をとんとんと叩く手のひらのあたたかさが、泣き疲れた体に、じんわりとしみ込んでいった。
頭を撫でられながら、僕はようやく呼吸を整えはじめた。言葉よりも先に、安心感が体を満たしていくのを感じた。
テーマ:涙の跡
7/26/2025, 1:43:53 PM