NoName

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「…あれ、どうした私」
洗面台の鏡に映る自分は、普段見慣れた自分ではないようで。
ポツリと一筋、涙が頬を伝っては落ちて行く。
「…うん、頑張ったよなぁ。頑張った。よく乗り切った!偉いぞー!」
優しく、優しく自分の頭を撫でる。
そうすると、不思議と涙がじわり。
自分でも案外気づかないものだ
忙しいからピリピリしてるもんね、仕方ない
今朝嫌なことがあったらしい、仕方ない


分かっている。
先輩に嫌味を言われたからって、毎日仕事を他人任せで理不尽に怒鳴られたからって。
私はそれでも上手くやっていけたはずだ。

それなのに何故。
以前はそこまで気にならなかったことが、一つまた一つと心に黒いしこりとなって、気持ちだけがひどく重たく沈んでいくのだろう。

こんなに脆かったっけ、年をとったせいだろうか
「大丈夫。きっと、大丈夫。」
そう話しかけるのは
どうしようもなく不安に感じていたからか。


はーーーっと大きく息を吸って
勢いよく顔を上げる
目元にタオルを押しやれば
洗い立ての心地の良い暖かな香りが鼻をくすぐった。


(書いたはずなのに、いつのまにか寝ていたよ…

11/4/2022, 7:56:29 PM