何気ないふり
少し見上げないと確認できない彼の顔。
私の歩幅に合わせて長い脚を弄びながら歩いてくれる所。
何時もお洒落な洋服。
太陽を反射してキラキラ輝く川の水面を背景に、彼の歩幅に合わせてふわふわ動く黒い髪。
丁寧な話し言葉の中に、偶にある乱暴な口調。
紳士的な態度。
ピンと伸びた背筋に、綺麗な所作。
私より年下のくせに、生意気に私を揶揄ってくるところも、そのくせ私の勇気を出した素直な気持ちにちゃんと照れてくれるところも、寝顔も、大きな手も、包帯だらけの身体も……。
挙げればキリがない程好きなところが溢れてくる。
彼にバレないように半歩後ろから眺めていたのが気づかれたのか、微笑みながら振り返る君。
「ふふ、見すぎ。」
赤くなった頬を斜陽のせいにして、何気ないふうを装って云う。
「君の髪の寝癖を見てただけだよ。」
3/30/2024, 2:56:54 PM