茶々

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 『明後日会いに行く時、夜桜も見に行こう』そう連絡があった二日前。元々会う予定ではあったがもっと長く過ごせる事が嬉しくて、いつも以上に張り切ってしまった。そのツケが回ってくるとはつゆ知らずに。
 彼-晴也(はるや)が来る日の朝、いつもより少し早く起きて部屋の片付けでもしようとしたが、なんだか体が重い。でも、そんなまさか。まだ間に合うだろうと軽く朝食を済ませ薬を飲み、再びベッドで一人うずくまる。軋むような痛みと秒針の音しかない中、罪悪感と情けなさに包まれる。
 「……い、……なた、……ひなた」
 焦った声で意識が浮上する。焦点の定まらない視界を動かせば晴也がいた。あぁ、そういえば合鍵を持っているからこちらから開けずとも入って来れるんだった。
 「はる、や?ごめん、寝てた…」
 そう言って起き上がっても、上手く体重を支えられず寄りかかる形になってしまった。
 「動くな、でもって無理もするなよ、冷蔵庫の中にポカリがあって助かった…飲めるか?」
 何か言っている事はわかるが、回らない頭では理解ができない。
 「桜、行けなくなって…ごめん」
 雫がこぼれ落ちていた。折角来てくれたのに何も出来なくて、約束まで狂わせた自分に嫌気がさしてどうしようもなくなって。
 「謝らなくて良い、一人でよく頑張ったな」
 そう言ってさする手が、匂いが、声が暖かくて。数日会っていなかっただけなのに無性に懐かしくて安心した。
 その後は結局お互い月曜だけ欠勤し、半分程散ってしまった夜桜を見に行った。少し物足りなさはあったが、二人で過ごせたことが何より幸せだった。

お題:『桜と頭痛』

6/8/2024, 11:58:59 AM