わをん

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『幸せとは』

目前の敵を倒すこと。それがお国のためになると考えて生きてきた。相手の息の根を止めるときに喜びを覚えてからは躊躇が無くなり、さらに多くの敵を倒せるようになった。仲間からは気味悪がられたが、今となっては変えようのない自分の性になってしまった。
湿度の高い密林に暑さが加わり、部隊の仲間の数が半分にも満たなくなったころに戦争に終わりが告げられる。祖国に帰ってきたときに空襲と新型爆弾で多くの国民が亡き者にされたと知り、何万という人間を顔も見ずに殺す手段を取って戦争を終わらせられたことにとてつもなく腹が立った。自分がそれだけの敵を倒せたなら、その喜びは如何ばかりだろうか。銃剣を握りしめられたなら良かったが手元にそれはなく、軍刀すらもない。自分の幸せはこの国のどこにもなく、今や誰にも許されない。それを形作ったのはこの国であるというのに。
ふふ、と笑いが漏れた。

1/5/2024, 9:59:18 AM