たくましい

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昼下り、電気をつけ損なった薄暗い教室にチョークで黒板を叩く音が響いている。

先程から教師はとりとめのない話を続け、その説明なのか板書を重ねていた。進まない授業に退屈し、窓の外の物憂げな空をぼんやり眺める。
この時季は湿った肌に張り付くノートがひどく不快だ。

やがてチャイムが鳴り、くぐもった空気の教室にざわめきが戻り始めた。

放課後、教室の掃除をしていると、入口の方からカラッと乾いた声が飛び込んできた。

「なんでこの教室電気つけてないんだ?」
そいつは周りに軽く挨拶を投げながら、僕の方へ近づいてきた。

「よっ!何か今日は……儚げ?じゃん」
「は?…あージメジメして不機嫌だから、そう見えるんだと思う」

当たり前のように肩を組んできたこいつは、隣のクラスの██ ██だ。去年同じクラスだったのをきっかけに一緒にいるようになった。

「ベタついてキモチ悪いから離れてよ」
僕は組まれた腕を掴んで、身体から引き剥がす。

ひっで〜と文句を垂れるが、別に気にしてない顔だ。
すると、ふと思いついたようにこちらを見て、

「何かさ、湿った肌同士くっつくと一体感生まれない?細胞レベルで結合するっていうか」

___何を言ってるんだろう。

「何を言ってるんだ?」
そのまま口から出た。

だからさ…と言いながら僕の腕をとり、自分の腕を寄せて内側同士をぴたりと貼り付けた。そして、ゆっくりと引き離す。

「ほらほら!今、一体感あったって!」

興奮した様子の██を無視して、腕に残る感触をワイシャツにゴシゴシと擦りつけて消す。

「いや分からないって」
不愉快な視線を送ったが、僕の嫌がる様子が面白かったようで、懲りずにベタベタと触ってくる。

「やーめーろーーー!!」
堪らず教室を飛び出した。案の定、足音が追ってきたから、逃げて、逃げて、逃げまくった。

ゼーハーと息を切らした頃には二人とも汗だくだった。最悪だ。

しばらく言葉も出ず、ただ呼吸だけが重なった。

「も、もう帰ろう…」
「はぁ、そうだな…」
息も絶え絶えに促すと、さすがの██も疲れたらしく、素直だった。

ちなみに、次の日も掃除当番になった。あいつも当然、道連れだ。

2/25/2026, 1:17:39 PM