君と見た景色
鮮明に覚えている。彼と見た流れ星の群れ。
まるで小説や漫画でしか見ないような素敵な。
この星は、十年に一度だと噂されており、毎回、ニュースになるほど有名なのだ。
そんな星を、彼と見に行った。川沿いの、綺麗な平地で。二人で乗るように、可愛らしい柄のレジャーシートを敷いた。流れ星が終盤に入ってきた頃に、彼は、優しく二度と叶わない夢を囁いた。
彼が微笑んで、彼と私の子供と見に行きたいと。
しかし、その幸せはもう既に崩れている。
神様が、私達を嫌いになったのか、彼の人生の小説を打ち切りにしてしまったのだ。
突然の心臓発作だ。
つまり、彼はもうこの世にいない。
そして子供が産まれた時、この星を見に来て、いつか伝えてあげようと思う。
この星は、お父さんと見たんだよ。と。
そして彼に言いたいことがたくさんある。
神様の情けなのか、彼が死ぬと分かっていたのか。最期に残してくれた、大切な私のお腹の中にいる子供は、もう妊娠八ヶ月を迎える。
その子と、最後のページを埋めてあげる。
幸せをくれた彼へのお礼には、すこし少なすぎる気がするけれど。
やりたいことは、全て叶えてくれましたと。
そして、
「君と見た景色」を見に行くね。と。
3/21/2025, 2:16:01 PM