霜月 朔(創作)

Open App

子供の頃の夢



お腹いっぱいご飯を食べたい。
温かい部屋で眠りたい。
優しく抱き締められたい。

幸せな子供には、
当たり前の願いさえ、
要らない子のボクには、
手の届かない、
綺羅星の様な願い事。

いつの間にか、
願う事さえ諦めた、
小さな夢の欠片たち。
何処かに無くしてしまったと、
思っていたのに。

闇の中で過ごしてきて、
何度も、生きる事さえ、
諦めそうになって。

人の悪意と憎悪の汚泥の中に
漸く見付けた、
僅かな、光。

その光に憧れて。
痩せた大地の中から、
芽を出そうと藻掻く
小さな若芽の様に、
ボクは必死に手を伸ばす。

小さな、小さな、光。
きっと。これは、
ボクが抱くことさえ、
許されなかった、
……子供の頃の夢。

6/24/2025, 6:50:59 AM