kiliu yoa

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 一瞬、冷たい雫が肩に落ちた。一粒、一滴、と肩を掠めた。しだいに、落ちて来る間隔が狭まって来た。驟雨だ。

 和多志は、足速に軒の下に逃げ込んだ。

今日に限って、笠も、和傘も、持っていない。最近、日照り続きで油断した。

 妻の言葉を聞けば、良かった。やはり、女性の勘は鋭い。男の和多志は、勘は当たらぬことが多いが、妻や和多志の身近な女性は、みな、よく当たる。

なんとも、不思議だ。きっと、女性にしか分からぬ、世界が在るのだろう。

     変な意地は、捨てるに限る。と、改めて反省した。

     
  ………用事は、終わった。後は、妻の待つ家に帰るのみ。

   妻への土産は、何が良いだろう。…これ又、妻の得意分野だ。

  その時々で、妻に頼む…贈り物は、いつも相手方に好評だった。

 今日は、妻の細やかで繊細な気遣いと、凄さに気付かされる…良い日だ。

  妻に土産を買い、青い切符を手に、二等車両に乗り込む。

 座席に深く腰掛け、新聞を広げながら、今朝の件の謝罪を考える。

      潔く腹を決め、家までの帰路に立った。



 




 

8/27/2023, 3:52:47 PM