狼藉 楓悟

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 朝。ベッドに寝転んだままスマホを手に取り、今日もいつものように君に『おはよう』の一言を某メッセージアプリで送る。飯食って支度して、バイトに向かう。
 昼、何かしら君に共有したいものがあれば写真を送る。日向ぼっこをする猫とか、新作の映画のポスターとか、君の好きそうなものを。
 夜。今日も、昨日と同じ様にに君に『おやすみ』と送って1日を終える。

 何日も、何週間も、何ヶ月も。僕は君に送り続けている。君のスマホは棚の上に置いた君の写真の前に。画面は酷く割れ、もう二度と電源はつかない。
 僕をかばって車に轢かれて死んだ君から、返信がないことなんか分かってる。始めは四十九日がすぎれば終わりにしようと思っていたのに、すっかり習慣になってしまった。
 たとえ無意味なことだとしても、以前君が僕に送ってくれていたように。君を、忘れてしまわないためにも。
 今日もいつものように、君へのLINEから1日が始まる。

『おはよう。今日は新作の映画を見に行ってくるよ。あまり僕の好きなジャンルの映画ではないけど、君があれだけおすすめしていたからね。』

 送信ボタンを押し、スマホを机に置こうとしたその時。静かな部屋に通知音が鳴り響いた。咄嗟に画面を見る。
 届いていたのは公式アカウントからのお知らせ。
 ……うん、当たり前だ。分かってただろう? なのに、何、馬鹿な期待を…………
 もう二度と、私の言葉は君へ届くことはないし、君からのLINEは、絶対に、届かないんだ。


#13『君からのLINE』

9/15/2024, 1:46:21 PM