この町では占いが流行っているようだ。私は通り過ぎようかと思ったが、遮るように立ち塞がる占い師の一人に捕まった。
暇潰しに今後の旅の無事を占ってもらう。
「あなたの横にいる子供は、すぐに離れなくてはいけません」
私はすぐに隣を見たが、他の店を見ているのか、子供の姿はなかった。
「なぜ?」と私は短く聞いた。
「異質なものです」
「どういう?」
私の問いに、占い師は顔を寄せて言った。
「その子は人の子ではありません」
「じゃあ、何の子なんだ?」
「それは私にもわかりません」
それ以降占い師は口を開こうとしない。私が貨幣を渡すと、占い師はこちらにきた勢いと打って変わって、そそくさと離れて行った。
夜、私が焚き火をする中、子供が帰ってきた。
無口な私も思わず声が出た。
「どこに行ってたんだ」
「これ買ってきた」
手には青い布を持っていた。彼はお金を持っていただろうか。欲しいといえば買ってあげたのに。
「何に使うんだい?」
私は昼間のことなどなかったかのように聞いた。しかし、子供はうつむき、布の切れ端を触った。答える気はなさそうだったが、やがて口を開いた。
「神様っていると思う?」
「……わからない」
旅の途中で出会ってきたことはこの子には言っていない。
すると、子供は青い布をひらひらとたなびかせた。
「前にこんな布を身に纏ってたんだ」
彼は大人びた笑みを浮かべる。
「こういう風に、さ」
子供は青い布を体に巻いて見せた。私は全く話さないのに、子供は悠々と話し続ける。
「守りたかった、あの時も。このマントに包んででも」
この子は何を守りたかったのだろう。そもそも何者なのだろう。
子供は向き直って、ぺこりとお辞儀をした。
「あなたはきっと会えるよ。素敵な神様に」
そうして彼は布を握りしめた。
「そのあと、また会いにきてね」
次の瞬間、子供はマントを翻すと消えた。
2/29/2024, 7:09:37 AM